時々知人などからオール電化住宅(別に住宅でなくても良い)の事を聞かれるのですが、あまり勧めていません。意匠設計でも最低限の情報は取り入れたり、判らなければ調べれば理解する事は出来るし、打ち合わせで必要なので検討したりしますが、実際にはあまり技術的に詳しくはありません。
イニシャルコスト・ランニングコストの比較などもメーカーごとに作成していますし、設備設計から聞いたりもするのですが、僕がお勧めしない理由はそう言った建築的な部分ではありません。
理由としては、
・非常時対応
・夜間電力
この2つです。
それぞれ建築をやっているから気付いたのか、怠けて素人感覚でいるから気付いたのかはわかりませんが、感覚的にこの2つの点に課題があると思うからです。
非常時対応については今回の災害で判る部分が多いと思います。
前から同業者で「停電時はどうなるの?」とか話していて、その時は非常電源・自家発電装置などで対応出来ると聞いていたのですが、普通に考えてもその対応時間が数時間程度(2.3時間くらい?)と想像できます。そしてその電源装置の動力は蓄電していた電力か灯油などです。ガス・水道とかでは有りません。
ライフラインと呼ばれるものは、電力・ガス・水道・下水道・電話ですが、動力となるものは電力・ガス・水道です。これらは普段恒久的に(お金を払えば)得る事が出来ます。それだからこそライフラインになりますし、普段の生活が出来ます。
アフリカの国の様に水を汲みに行って使用していたら動力として使わないと思います。
非常電源の場合、この動力の燃料の部分に問題があるので「一時的な非常対応」しか出来ないと考えます。
まして、今回の様に灯油などの配給が困難になったら対応出来ません。
次の夜間電力についてですが、オール電化住宅の利点と言うか、セールスポイントは「電気料金の安い夜間電力を使う」です。現在どのくらい蓄電でき、その効率がどのくらいなのか判りませんが、昼間と夜間の消費電力量の比率から夜間電力が安くなっています。しかし、オール電化住宅が増えれば昼間電力が減り夜間電力は増えます。他にも夜間電力を活用しようという動きはあるので、その内夜間電力も使用量が増えると考えられます。
そうなると電気料金が上がっていくのは想像できます。今回の災害で節電対策として電気料金が70円ほど上がると聞いていますが、落ち着いたら値下げするとは思えません。電気料金が上がればオール電化の利点は無くなり、下手をすると逆に光熱費が上がる恐れもあります。
どちらも平常時、現在は問題にならない部分ですが、想像することは容易です。
そして個人的には今回の災害も含めて、動力・ライフラインを一本化するのには疑問です。
同時に殆どの事が電力なくして成立しないので、出来るだけ分散化を考えなければならないと思います。
ガスも家のコンロは電池式の着火なので停電時も使えますが、給湯器は着火・操作が電力なのでガス給湯器といえど使えません。
水道もその給水システムによって違いますが、高層建築で増圧ポンプを使用しているものは水を電動ポンプで高層へ上げているので、下層階(3階くらいまで)しか使えません。一般的に一軒家は直圧と言って水道局(浄水場?)で圧力を掛けて供給しているので、水が止まる事は無いと言われていますが、水道局で圧力を電力で掛けていたらそれも無理です。
電話も昔の黒電話ならば一切電力を使わず、本当に電話線一本でつながっていたので、電話線さえつながっていれば通話出来るのですが、最近の電話機は本体で電力を使うので動かなくなります。そもそも「デジタル回線」という時点で電力を使いそうです。
このように実際には殆どのライフラインは電力で司られています。これは危機分散の考え方からしたら避けた方が良いと思います。今後仕事で打ち合わせする時にも気をつけて行こうと思います。
給湯器ならば昔の様にスイッチ(ライターと同じ着火方式)で着火できる方式にしたり、緊急用に電力以外で着火出来る方式を併用しているものを選ぶ、勧めるようにしたいです。そもそもそういうのがあるのかからですが。
水は大規模な建物では地下ピットに緊急用の水(飲料用でない)を貯留している事も有りますが、個人住宅でも同様な事を取り入れる事は検討しても良いと思います。対費用効果など課題は多々ありますが。
あと、現在では防犯・警備をセコムなどの機械警備に頼っている所が多いですが、全て電力が止まると無効になります。非常時に建物から安全に避難出来る様にする為、開錠するのが基本です。万一火事などで電力が止まった時に、警備が掛かっている為に避難出来なくなる事を考慮しています。
やはり昔の様に、鍵・ガラス・面格子・雨戸などで防犯し、死角の少ない建物、普段から近隣との交流などで、地域としての防犯が有効だと思います。
いずれにしても、電力に頼りきった状態から出来るだけ分散させる方法を考えておく事が必要だと思います。