ディテールで語る建築 – 内田祥哉

雑誌「ディテール」で連載されていたものをまとめた本。noizの豊田さんが名著と紹介していたので読んでみたら本当に名著だった。

 

ディテール・詳細・納まりと似たような言葉があるが、この本ではそれらの納めるという意味をもたせている感じはしない。所々で本当に細かい納まりの話は有るが、綺麗に納める、意図通りに納めるという感覚よりも建築として筋が通っているか、物理や物事として筋が通っているかという感覚の方が強い。

最初の方はモジュールやプレファブ・システム建築・スケルトンインフィルなどの話が出てくる。今だとプレファブやシステム建築からディテールに結びつく感覚が低いと思うが、そもそも今のシステムに至るまでの検討と納まりの単純化・均一化・信頼度までにどれ程の時間と労力が掛かったか想像できない。槇さんや谷口さんの建築のイメージに近いと思うが、目地のピッチを合わせて緊張感のある空間を作る事と、システム建築を作り上げる事は同義だと思う。

この様にシステムから表現に至るまでの考察が説明されている。

 

個人的にデザインとはシステムの上位に有ると考えていて、システムを無視しているものはデザインではなくアートだと捉えている。同じ考えから導き出される納まりを、無理無くモジュールに沿って納めていく。これがデザインの基本だと思う。既製品やプレファブで構成された空間は今ではつまらないかも知れないが、そもそも求めているものは今の建築家が造る建物でも大元は既製品を納める感覚と同じでいかに筋が通って納めるか、表現や部位・扱う広さ・考える広さなどが違うだけと考える。

 

この基本であるモジュールやシステムをしっかりと説明し、そこから具体的な建物に入っていく。最初はデザイン的に見えないかもしれないが、気付いたら凄くデザインの話になっている。これは恐らく書かれた順番だから分かる事で、デザインからシステムとして逆で書かれていたら繋がらなかったかもしれない。

元々自分が設計時の詳細や少し広い感覚での基本計画で似た考え方をするので、その意味や効果が凄く素直に入ってきた。

 

話が進むに連れて、設計から材料や工法になっていく。その後は環境とかにもなっていく。それらに対してもシステム的な考えから入り気付いたらデザインになっている。

失礼な感覚だが、最初は少し時代遅れの歴史的な話かと考えていた。しかし今でも最先端で、むしろ忘れがちになってきた事を教えられていると分かった。

各単元で書かれている事をしっかり掘り下げたらそれだけで凄い分量になると思うし、昔の人はそれを通り過ぎて今がある凄さを感じる。僕らは時間が無いとも言ってられず、歴史と先端の両方の情報を貪欲に取り入れながら、その上で新たな事を起こす気概を持っていかなければならないといわれている様に感じた。