10年小商い〜自由と現実のあいだで生きのびる〜 - 磯木淳寛

磯木さんとの出会い

 

磯木さんと初めて会ったのは、確か2019年の後半。いすみラーニングセンター(以下、いラセン)の何かの集まりだったと思う。そのときはほとんど会話もせず、「『小商い』で自由にくらす」という本を書いた人で、この地域のキーパーソンだよ、と聞いた程度だった。

当時の自分は小商いにも、いすみ地域で盛んなマーケットにも興味がなく、なんとなくその場を過ごしていた。(まあ、基本的にどんなときもなんとなくやり過ごすのですが)

それから今まで、最低でも月1回のペースでいラセンに通い、ときどき磯木さんと顔を合わせてきた。磯木さんは落ち着いた雰囲気の方で、こまめに営業的な挨拶をするタイプではない。なので、ちゃんと話すようになったのはここ2〜3年くらいかもしれない。

いラセンではときどきワークのようなことをやっていて、その中には磯木さんが考案したものもあった。名前は忘れてしまったけれど、どれも自分の考えをしっかり伝えないと成り立たないもので、とても好きだったし楽しかった。そしてその後、自分の中に小さな変化をもたらしてくれるものだった。それから、とても言葉を大事にしている人だということも感じていた。

 

10年ぶりの新刊

 

そんな磯木さんが、10年ぶりに本を出版するという。

前作の評判や、いすみに通う中で自分が変わってきたことからくる興味もあった。でも一番は、単純に「磯木さんがどんな本を書くのか?」が気になって読んだ。

簡単に言うと、前作に登場した18人の小商いの人たちに再びインタビューをして、10年続けてこられた理由などを書いた本だ。ただ、インタビューが並んでいるだけの本ではない。18人それぞれが主役の本でありながら、同時にすごく「磯木さんの本」だとも感じる。

インタビュー、ドキュメント、論文、考察とさまざまな要素が入っているが、そこに磯木さんの考えがいい具合ににじみ出ていて、2つの軸を同時に読んでいるような感覚になった。

  • ひとつは、小商いをしているそれぞれの人の物語
  • もうひとつは、その人たちを追いかけ、自分の中に取り入れたうえで、磯木さん自身の言葉として書かれた物語

このバランスがとても良くて、知らないうちに自分にも当てはめながら読み進めていた。

 

「何かを決めてやり続けている人」のための本

 

タイトルには「小商い」とあるけれど、この本は「自分の中で何かを決めて、やり続けている人」のための本だと思う。

この「やり続けている」は高尚なものでなくていい。仕事でも習い事でも、趣味や習慣でもいい。自分がそれを続けていきたい、成長したいと思っていれば当てはまる。本に出てくる18人は、10年の振り返りの中から、そのためのヒントを教えてくれる。

読み終えて最初に出てきた感想は「すみません」だった。自分の会社のことだけでなく、日々の仕事についてさえ「ここまで正直にやっているか?」と考えさせられてしまう。

それでいて、全体としては重くない。磯木さんと話したときのような、軽やかな気持ちにさせてくれる。

 

特典ブックのこと

出版記念イベントで購入したので、特典ブックもついてきた。

これもまた良かった。細切れの文章は内容が面白いだけでなく、記録の手法としても使えそうだと思った。本編と同じように磯木さん自身のことも書かれていて、それを読んで、とても誠実に書かれた本なんだとあらためて感じた。

それから、書く対象そのものだけでなく、そのまわりにあるものの気持ちまで考えてしまう、という部分にはとても納得した。