耐震基準

一般の人で建築に一番「技術的に」近い知識と言うと「耐震基準」だと思います。

よく「この建物は震度○まで大丈夫です」のような記事。
実際には細かい具体的な根拠が出せないので、広告としては出せないはずですが。(宅建の決まり)
でも耐震・免震・制震など、日本が地震国家な為か、ゆれに対する基準には過敏です。
また、今年の春に起こった東日本大震災の記憶が残っているため、余計過敏になっています。
では、実際に専門の分野としての耐震基準はどうでしょう?
建築をやる上で大元の法律となる「建築基準法」では具体的に書いていません。
木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造などの柱の大きさや壁の厚さ、鉄筋のピッチなどは書いていますが、地震に対しては「安全である事」の様な曖昧な表現で、具体的に「震度○以上に耐えられる事」と明記はされていません。
また、地震が地球・自然を相手にしているもので、理論よりも経験値が重要な分野なのでなかなか学問的に進歩しません。それこそ不謹慎ですが、大規模災害の度に重要な資料が手に入る状態です。
地震自体も様々な形態が有り、直下型や長周期型など様々です。
阪神淡路大震災や新潟中越沖地震などは直下型で、東日本大震災は長周期型です。
新潟中越沖地震は震度6強で、東日本大震災は確か震度の基準以上になっていて震度は発表されていないはず。マグニチュードで考えると新潟沖地震は6.8で、東日本は9.0、その差は数十倍の格差があります。
しかし新潟沖中越地震では木造住宅が壊滅的な被害が生じ、東日本大震災では木造住宅の被害が少なかったです。
これは地震の性質によるもので、直下型地震に対しては木造は弱く、長周期に対しては強かっただけです。柳の木と同じ。
新潟中越沖地震は単純に地震のみを考えて建築的強度を検証すれば、その後の対策や指針が検討できましたが、東日本大震災では地震以外に津波があったので混乱をきたしました。また対象範囲が大きすぎて、建築と言うより都市となってしまうので建築が専門の人たちに破綻をきたしました。
数値のマジックですが、マグニチュードで見ると6.8と低い新潟沖中越地震で木造住宅が倒れ、それよりも数十倍強いマグニチュード9.0の東日本大震災では木造住宅が持ちこたえた現実をみると、素人の人は何を基準に建物強度を考えれば良いか判らなくなると思います。
一応、建築基準法ではそれから派生する細かい法令も含めて色々と決まりはありますが、具体的に数値を区切って指定している部分は少ないです。
また、自然界上に存在する物質にそれぞれ固有振動数が有りますが、それを基準として建物強度を考えると、とてもばらつきが有ります。
同じ強さでもコンクリートより木の方がしなやかさ(粘り)がありますし、同じしなやかさで勝負する木造と鉄骨造でも木より鉄の方が強そうです。
このように耐震基準に対して様々な考え方・捉え方が有る状態ですが、一般的に「コンクリート造>鉄骨造>木造」の順に強度がなっていると思われているのはいけないと思います。
この考え方は極端に言えば「材料の堅さの順」のイメージでそれぞれのしなやかさや、そこから踏み込んだ架構の技術的・物理的特性などを考慮せずに判断しているものです。専門的な事も絡むので、素人の人がそう考えてしまうのは仕方ない部分も有りますが、建築を専門にしている人でもこのような考え方を無意識に許容しているのは問題だと思います。
東日本大震災の3.4ヵ月後くらいだったと思いますが、建築家協会だか国交省の関係部署だかの人が現地調査の報告をした時に
「同じ震度(マグニチュード)に対して強度を持たせているのに、構造種類によって崩壊時期にばらつきが有るのは問題である」
という主旨の発言をしました。
これは、
「同じ震度7に耐えられる様に造ったのに、コンクリート造が残って木造が壊れた。『木造だから弱く、仕方ない』という考え方はいけない」
と捉えられます。
とても当然の事だと思います。
東日本大震災でも建物が倒壊した原因が地震の場合と津波の場合に分けられます。
それを一括りに「耐震基準が…」と判断しては将来に渡って誤った方針を立ててしまいます。流石に今回は津波の影響を多分に検討していますが。
建物自体は様々な形態・構造が有りますが一概にどれが良いとは言えず、それぞれに一長一短が有ります。
大事なのは設計者を始めとする専門家が、設計から施工の間にしっかりと施主に説明をして、きちんと理解してもらう事だと思います。「素人だから」「どうせ説明しても判らないから」ではなく、最低限の大事な事を如何にわかりやすく伝えるかを考えなければいけません。