建物を建てる時は色々な書類を作ります。
図面はもちろんの事、計画段階では打合せ議事録や性能検討書、概算見積書、法的根拠の書類など。
計画が進んで行き契約する時は、契約書やその根拠となる図面。
契約書に含まれる内容かもしれないけど、契約内容や工程表など。
法的手続きをする時は、それぞれの書類の控えなどを示しての承認書や説明内容の打合せ議事録など。
工事が始まれば仕上げの承認や打合せ議事録、工事へ指示した施工指示書など。
建物が完成して引き渡す時は、各検査結果報告書、保証書、受渡確認書など。
こう考えると書類作ってばかりです。
しかし、建物が出来上がり竣工書類として施主・施工者に渡される書類は少ないです。
設計図書や契約書関係は最初のうちに渡しているので、忘れていることもあると思いますが、大切にしたいものです。
でも実際建物を建てた人(施主)は、企業のその様な部門の人で無ければどのような書類をもらえるか、必要かなどは判らないと思います。
当たり前ですが契約書は残さなければならないですし、竣工図面、各種機器・設備の取扱説明書及び保証書は必須ですし、施工者も提出してきます。後は設計者・施工者の保障を保つ為に建物引渡書や鍵引渡書など色々な書類が有ります。
しかし本当に建物を維持していく為にはそれだけでは足りないと思います。竣工図面もどのレベルの図面が提出されるかで大きく違います。確認申請提出図面は当然提出されますが、施工で使用した各種の施工図やメーカーより提出された製作図は必要だと思います。
また建物を使用していて不具合が出たときに一番必要となる設備図(照明の配線やコンセントの配線、LANの系統や空調システムなどが描かれた図面)は容量の計算書なども含めて施主が所持する書類だと思います。
同様に必要な書類として、建物維持の為の書類があります。
設計図、仕上げリストでも代用出来ますが、使用した材料のメーカー・型番は書類で必要ですし、各工種の連絡先・担当者も有ると便利です。大きな施工会社は書類もしっかりしていて、潰れる心配もありませんが、最近だと何時どこの会社が倒産するか解りませんし、小さい会社だと尚更です。
最近だと営業に言わないと提出してこない事が多いですが、建物維持管理の為の書類として「ライフサイクルコスト」や「瑕疵期間のリスト」などは提出してこない場合は言った方が良いです。
建物は造る時より維持する方がコストが掛かります。大きな建物ですと企画から解体までの総事業費の中で、維持管理に60%くらい掛かると言います。建設費より高いです。
企業の不動産部などの人は解るかもしれませんが、戸建住宅などの小さい建物の施主でそこまで理解している人は少ないと思います。建物はメンテナンスを「する・しない」で「持ち・性能」などが大きく違ってきます。これは運動選手が道具を使いやすいように調整していくのと同じで、出来上がった建物に対して様々な工夫をしながら使う事で、設計・施工時に予測出来なかった使用方法が生まれ、それに対して早めに対応する事で建物のハード・ソフト両面で寿命を延ばす事が出来ます。
このように建物維持はとても大事なのですが、建物を建てる時の勢いが竣工で落ち着いてしまうのか、竣工時に維持まで手が廻らない事が多いです。
もちろん設計者・施工者はプロなのですからそれではいけないのですが、どこまで資料を作成して提出しているか不安な部分も有ります。設計事務所として提出している人としていない人、施工会社に任せてしまう人、気にしていない人、様々です。
本来ならばその建物を設計・施工した人が一番建物を知っているので、メンテナンスの時も同じ人が関り、考える事が施主にとっても二度手間にならなくて良いのですが、そうならない事も多々有ります。設計者・施工者も積極的に施主に説明する事で、それ以後の改修・メンテナンス工事に繋がるし、仕事以外の人間的な信頼も得られる事も多いし、場合によっては新たな仕事を紹介してくれるので良いはずですが。
書類としてはそれ程大掛かりなもので無いのですが、最初の準備が手間が掛かるのと、万一瑕疵が無いのに提出した内容から外れた場合にクレームとして捉えられてしまう場合があるからか、不具合の時の連絡先を教えてその時々で対応している事が多いです。
結局建物を建てる時に作成する書類は、設計図などより出来上がりのものを示す書類が重要になります。設計図などは幾ら綺麗に描いてあっても実際の建物が目的なので、建物完成後はあまり意味がありません。それよりもその後のメンテナンスの為の竣工図や建物自体のデータが必要になります。
工事前に作成する資料で重要になるのは、打ち合わせ議事録です。
これは本来ならば必要になって欲しくないのですが、何かトラブルがあった時に「言った」「言わない」の根拠となるもので、極端な場合ですが裁判にも有効です。
まあ、極端な例も有りますが、建物を建てた時には膨大な書類が発生しますが、施主が最終的に手にする書類は区々です。建売・マンションなどの場合は何故か極端に少ないと思います。契約の関係もあるのかもしれませんが、出来るだけ多く受取った方が良いと思います。