孤高の人 - 新田次郎
ISBN:978-4101122038
「単独行の文太郎」と呼ばれた、大正から昭和初期に活躍した登山家・加藤文太郎を描いた小説。
知っていくと文太郎は生涯単独登山を目指した訳でもなく、この本に描かれている事と違う事が多いが、新田次郎が「孤高の人」と付けたこの本では「加藤文太郎=孤高」でなければならない。
小説は歴史書でなく、ノンフィクションでないのだから、決して事実に基づいて書く必要はない。新田次郎本人もインタビューでその旨を語っているし、司馬遼太郎もその傾向が強い。そもそも歴史小説では創作をしないと登場人物の会話などは描けない事が殆どだと思う。
それが正しい・正しくないと決めるのは誰も出来ないと思うが、この本に限っては、発表時に文太郎の未亡人が実名での公表を望んだ。そして未亡人は夫を誇りに思っていた。
人物描写に対しては様々な印象があるが、文太郎が残した事実は凄まじい。
登山に対して知識が無い人間でもわかるくらい人間離れしている。それくらい凄い。
そして、それは寒さ・空腹・誘惑などに勝つと言う、とても原初的なことなのでとても伝わってくる。
登山をやっている人、興味の有る人は当然中に入っていけると思う。
でも、それ以外の人も十分楽しめると思う。捉え方によっては仕事にも転用は出来る。
とても古い本だが、現代でもしっかり伝わるので、古さは感じない。