住まいとほどよくつきあう-宮脇檀
ISBN:978-4101312118
影響を受けた建築家は数多いですが、恐らく安藤忠雄と同じくらい、一番影響を受けた建築家かもしれません。特に住宅設計や、デザイン・思想に卒倒せずに住手・使用者の気持ちを第一に考えて設計する事を学んだ建築家です。
存命中も昨今の灰汁の強い建築家の様に思想的な発言や理想・デザイン重視の発言が少なく、いつも柔らかい文章で書かれるエッセイをちょっとセレブな婦人雑誌や、素人向けの住宅雑誌に発表したりしていたのであまり「強い」イメージがないですが、無くなった現在も影響力があり、建築家として名前を知られていて、数十年間第一線で活躍した人が弱く思想が無いわけは有りません。
言葉こそは柔らかいですが、しっかりと信念を持ち、良い建築を造る為に絶えず考えていた人です。その方法や結果が派手でなく、優しく見えるので最近の強い建築家のイメージが無いだけでしょう。
この本はそう言った設計・建物を建てる時の考え方を設計者・施主の両方の立場で読めるように書かれた本です。
施主の立場からも書かれているので、内容は住宅に関する事が多いです。キッチンの考え方からリビング・書斎の考え方など、実際に家を建てようと考えている人にはとても為になる話ばかり。この本の内容を覚えて、実際に頼んでいる設計屋さんにぶつけたら何気に焦る事も有ると思います。同業者でも「ほー」って思うし、かなり宮脇さんの納まりや設計手法を参考にしている人は多いです。まあ、自分が勉強不足ってのも有りますが。
いつもの通り文章自体は硬くなくて読みやすいので、ちょっとした建築に関するエッセイ程度で読むことも可能です。そもそも夫人向け雑誌に書かれていた事もある位ですから。
読むにつれ、満たされた生活を送る為の建物を設計するには、自分自身がその様な生活を送らなければ説得力が無いのを感じます。
決してセレブの生活でなく、身の丈で満足する生活を見つけることから家造りは始まっているのかなと思います。