沈まぬ太陽 -山崎豊子-
フィクションですが日本航空を扱った小説。当時の事は分かりませんが調べてみますと、御巣鷹山墜落事故を始めとした様々な事実を基に書かれた作品で、その扱い方や話の構成、登場人物の取り上げ方などで様々な論議が起こった作品です。
その方法や議論は作者のあとがきにある通り、読者がそれぞれ評価すれば良いと思います。それよりも作者はもっと広く大きな部分を書きたかったのだと思います。
長期間の海外赴任・組合運動・事故・不正…
それぞれの事は決して小さくありません。
御巣鷹山の事故は今でも続いていますし、当時も長い間扱われていました。
その他の出来事も当時は分かりませんが、現代では新聞一面で一定期間扱われてもおかしくないものばかりです。
しかし作者はその一つ一つを取り上げて個別に書くのではなく、一連の出来事が起こる土壌・企業方針・群がる人々を書く事を選んでいます。それによってそれぞれの出来事の本質が浮き出されていき、余計に問題の深さを強調しています。
純粋に小説だけを読むと登場人物の強さと、様々な出来事の凄さに唖然とし憤ります。
そして集団の怖さを感じます。
しかし逆に個人の強さと影響力に勇気付けられ希望を持つ事が出来ます。
小説後の出来事も含めて考えるとその人の思想が浮き上がりそうですが、影響力の強さを実感すると共に「自分ならばどちらに立つか」と自問自答します。これこそが本を読む意義であり、文学なのだと思います。ここで数年前にエルサレムで村上春樹が行った授賞式でのスピーチの様に、自分の考えを堂々と主張する事が作家とその他を分けると思います。
こういった意味では、作者は一貫して自分の考えを(他の作品も含めて)通しているので作品にも強さがあるのだと思います。
小説後の議論では正確さや取り上げ方、創造している部分などに色々な批判がありますが、個人的にはどうでも良い話です。重要なのは取り上げられた出来事が大なり小なり起こったという事です。個人的には作者の本意はここに有り、それを考えて欲しい、変えて欲しいと思って書いたのだと捉えています。
作者の小説は取り上げる内容と描写具合がとても好きで、最近密に読んでいます。しかしちょうどこの文章を書いている時に作者の訃報を知りました。これから新作を読む楽しみは無くなりましたが、数多くの作品が残っているので大事に読むと同時に御冥福をお祈り致します。