時刻表昭和史

時刻表昭和史 - 宮脇俊三
ISBN:978-4041598085

古本屋で手に取った時は「昭和の時刻表の変遷と履歴を書いている本かな」と思い、個人的には時刻表が好きなので楽しめるかと思って購入した。それに他の本で宮脇氏の文章が好きだと言うのも解っていた。

しかし読んでいくとこの本は、昭和の時刻表を軸とした宮脇氏による個人の経験を元にした昭和体験記である事が解る。一応は「○年の時刻表改正ではどのような事が起こった」みたいな事が書かれているが、内容はそれについての解説ではなく、時刻表が変わった事によって与えた宮脇氏の生活について書かれている。

書かれている期間は昭和8年から昭和20年まで。宮脇氏の8歳から20歳までの期間。
多感な時代に戦争へと突入した社会と、それを有るがままに生きていた宮脇氏の感覚の隙間が面白い。

恐らくこの本は鉄道好きが殆ど手にすると思うが、実際には鉄道の本ではなく戦前から終戦までの一般人の生活・感覚を生々しく表現している本だと思う。確か妹尾河童の「少年H」でも同じ様なスタンスで書かれていたと思うが、この本では宮脇氏がその様なスタンスで書いていないが、結果的にそうなった事で余計現れている。

最初の空襲警報は怖かったがその内慣れてしまって、空襲警報が鳴る中に空を見上げて、アメリカ機の向かう方向で爆撃先を予想していたり、空襲を受けていない地域の人間は受けた地域の人間に対して「仲間はずれ」の様な申し訳なさを感じていたなど、その当時の一般市民の感覚が書かれている。

そして圧巻の結びの一文で終わる。

解説などを読むと知っている人には評価されている本みたいだが、もっと評価されても良いと思う。
個人的には名著だと思う。