父たちよ家へ帰れ

父たちよ家へ帰れ - 宮脇檀
ISBN:978-4101312132

数ある宮脇氏のエッセイでも、その集大成と言える本。
内容はいつもの様にわかりやすく建築の事を語っているが、その背景に娘の成長があり、結婚して家から去っていく事が含まれている。
宮脇氏の本をいくつか読んでいくと解るが、氏の建築哲学の中には「家族」があり、家は「建築」ではなく「生活の場」として有り、それを表現していくのが父娘2人での生活を書き綴る事だったと思える。
男手一つで娘を育てる事にプレッシャーを感じたからか、負けず嫌いなのか、元々天性の家事好きなのか解らないが、完璧なまでに家事を行い、その実体験を設計に生かし、そこらへんの若い家事をサボる主婦に毒を吐く。

既に何冊か宮脇氏の本を読んだ後なので、本の中であるが宮脇家の概略が解り、娘の性格も把握している。TVドラマやサザエさんの様に。
本の後半からは建築に関するエッセイと言うより一家のドラマを見る感じになるが、そこらへんのエッセイ・小説などより全然泣けてくる。しかし宮脇氏のエッセイが好きな人は、建築の事より一家の事の方が気になっていると思うので違和感は無い。

中でも、娘の彼氏から父として結婚の申し込みを受ける時の描写と、結婚した娘が友人からこれから毎日3食を考えなければいけないとネガティブに言われた時の「これから毎日3回も美味しい物を作る事を考える事が出来るの、素敵」と答えたエピソードだけでも、本タイトルの意図は伝え切れていると思う。

宮脇氏のエッセイは素人向け、技術書は当然専門家向けの傾向が強いが、エッセイでも人柄からか専門家のファンは多い。そしてそうなった設計者は「住宅建築家」を目指していく人が多いが…
その専門家こそ、そしてどんな業種であれ仕事を頑張っている父こそにこの本は読んで欲しい。
スローライフやスローフード、ロハスなど良く判らない生活スタイルがもてはやされているが、本当の「家庭」がここには描かれている。

この記事へのコメント

  1. >>kagamiさん
    宮脇氏の良さはなんなんでしょうね?
    暖かさと懐の深さを感じます。
    直接関係無いけど、今日新しいコースを走っていたら、色々と琴線に触れる住宅があって楽しかった。