既存図

仕事で改修工事をやると避けて通れないのが、既存建物の読み込み。
現場調査や採寸、既存図面のトレースなどです。

最近ではポツポツと既存図もCADデータになっている事も有りますが、殆どが紙ベースです。
そうなると図面を読み取って一から描き直しです。

一応生業なので、図面を読む事や描く事には問題は無いのですが、一番大変なのが「意図を読む事」です。「意図」自体は色々なレベルが有って、意匠的に配置や造詣を読み込まなければならない場合も有りますが、役所の仕事とかでそのような意図が無くても構造や納まりのルールなどそれなりにきちんと造られた建物ですから何かしらの意図があります。

これがなかなか判らない(笑)
同じ部位でも図面によって寸法や仕上げが違っているのはしょっちゅうですし、ひどいと形すら違う。まあ、計画中か施工中に変更が有ったのだと思いますが。
時には今やっている改修工事に大きく関係する部分と言う事もありますが、殆どはどうでも良いような細かい相違です。しかし性格からか、そう言った部分がとても気になる。気持ち悪い。

しかし既存図作成にはこのような読み込みの訓練の他に大事な事があります。
図面のルールや構成、表現方法、読み方を学べると言うことです。
施工する立場にいる人は普段から人の図面を見慣れているのですが、設計の場合は結構見ることは少ないです。自分の関わっている建物の図面を「設計意図」を知っている状態で見る事はあり、それは結構簡単で、先入観があるので見落としも多いです。しかし全くその様な事に関わっていない、それこそ何十年前に建てられた建物の図面を読むにはそれなりの経験とコツがいります。

建物全体をトレースする場合は最初に意匠図では無く、構造図から追っていきます。
建物を建てる時に施工者が何の図面を優先して読むかです。建物の強度に関わる事ですので、意匠図の間違っていたり、希望をこめた数値より、計算してしっかりと確立された数値の方が信頼がもてます。そこから図面全体、特に特記仕様を読んで壁のふかしなどを考慮して躯体を書いていきます。
これは1から書く図面もそうですが、実際に建物を造る順番に図面を書いていった方が一番早くて、間違いが無いと思います。逆に仕上げから追って行ったら絶対に最後で数値が合わなくなります。
ついでに言うと、造る順番で書いていると「造れる納まり」「造れない納まり」の判断が楽になります。やっていることは実際に頭で造りながら書いているので。逆を言うと、施工を知らないと厳しいです。

また、人の図面を読んでいると学ぶ所が多いです。
凡例の書き方や、まとめ方、文字の書き方など色々考えられているので、自分の図面に取り入れたりして日々判り易い図面を心掛けます。それに昔の手書き図面は書き手の技術がそのまま出ているので、素晴らしい図面は芸術品の様に感じます。

僕はたまたま最初に入った事務所が改修工事もやっていたので、仕事を始めた最初の方から既存図を作る作業をしていたのですが、今にして思えばとても貴重で勉強になりました。それこそ小さい事務所だったので新人教育なんてものは無く、図面の書き方も自分で本を読んだり、見よう見まねで覚えたので、その時期にきちんとした図面に触れられたのは良かったです。
そのせいか未だに他人の図面を見るのは好きで、雑誌に載っている納まりなどは良く観ます。でもそれは雑誌用なので原図を見たいのですが、さすがになかなか見る事はできません。