オリンピック景気と現実

2020年のオリンピックが東京に決定しました。

様々な分野で特需などのおかげで影響が出ると思いますが、個人的には厳しい事を考えています。

 

一般的に建設業はスタジアム・選手村などの建設・整備の為に大幅な受注が見込めます。当然景気も良くなり仕事量も増えるでしょう。

しかしもう少し現実的に自身の状況を取り入れて考えると楽観できません。

 

僕の仕事は設計で、現在はマンション設計に特化している事務所に勤めています。

数年前の姉歯事件の影響で着工数が大幅に落ちて不況になっていましたが、最近は盛り返しています。しかし東日本大震災以後、東北地方の復興のため、また以前から問題になっていた職人の減少のために労務費が大幅に上がっています。これはそのまま工事費・販売費の増加につながります。

数ヶ月前に政府から労務費の高騰について指導が入りましたが、内容としてはその正当性を確保するもので建築主に対して過剰な値引き交渉を止まらせるものです。

この様な状態の中でオリンピック関連の建設ラッシュが起これば、職人不足・労務費高騰はますます進みます。

 

最近公私問わず同じ業界の人間と話すと「工事費が上がって採算が合わない」「工事費が落ち着くまで少し控えている」と言う言葉が多いです。現状をみると理解できる内容です。

しかし今後はこの傾向が収束するのではなく、加速していきます。現在特に少ない職種は鉄筋・型枠と言ったコンクリート関連ですが、それなりの技術職なので急激に増える事は無いし、経験の少ない急増の職人では逆に優良な職人の確保の為に労務費の格差は拡がります。そして極端な話、日本では住宅が不足している訳では無いので無理してマンションを建てる必要はありません。そして建設会社も同じ費用・利益ならば注目度や地域貢献の大きいオリンピック関連施設の工事を取ります。

こう言った動きはオリンピック開催が決定する以前の数ヶ月前からあり、決定時にすぐ動けるよう余裕を持たせるために付き合いの長い建設会社への見積依頼も断られている状態との事です。

 

この様にマンションの建設予定がなければ設計依頼も無い訳で、その他の用途を設計しなければなりません。しかし人によって違いはありますがマンション設計業界は特殊で「マンション設計に特化すると他は出来ない」という発言もあります。逆に「マンション設計は食いはぐれが無い」とも言われます。どちらも途中にデベロッパーが入り、直接住み手と仕事をしない影響が大きいです。

 

そしてもう一つ設計にオリンピックの影響が有りそうなのが改修です。

前回のロンドンオリンピックのみならず、近年の大規模な大会で謡われているのは「省エネ」「環境に優しい」「コンパクト」などの地球に優しい大会です。

改修自体はこの様な世界大会に関係なく増加していますが、現在よりも増加率は上がるでしょう。そして改修のレベルにも拠りますが、内装の変更程度なら建築士でない者でも可能なので競争率は上がります。

 

改修の設計は特別ではないですが少しのコツと経験が必要です。

マンション設計では殆ど携わる事が無いので、なかなか入って行けない設計者もいるでしょう。

 

この様にマンション設計業界では「着工数の減少」「同業者同士の仕事の取り合い」が強くなるのではないかと考えています。

 

では、自分たちもオリンピック関係の設計に携われば良いのではとなりますが、末端の下請けならどうか分かりませんが、基本的には大手組織設計事務所・有名アトリエ系設計事務所・大手建設会社で占められるでしょう。

 

そしてオリンピックが終わると仕事量が減るので、建設業は一時不況になると考えられます。これは過去の世界大会で起こっている事なので、程度の差はあれ避けられないと思います。

 

以上の様に冷静に考えるとオリンピック決定で喜んでもいられません。

まあ技術職は自らの仕事の結果で次を取らないといけないので、周りを気にするのではなく自分がしっかりやれば良いのは当然ですが。

一応僕自身はたまたまマンション設計以外や改修設計の方が多く経験しているので、そういったものを損なわない様に勉強し続けていけば可能性はあります。それに出来るだけネガティブに考えて準備しておけば、ある程度の変化にも対応出来るでしょう。